ハングリーグリーン

やあ。
今日は吉祥寺でライブだったぜ!
観に来てくれた人、目撃してくれた人、どうもありがとうございました。

そして、いろいろな人に偶然会ったよ。
駅を降りて北口を出た辺りで、スーナーズのガジャGさんが俺に手をあげて笑ってた。
そこで待ち合わせをしたかのような偶然で、そのあと、お互いの現況やこれからのこと、そしてもつ鍋のお店のことを30分くらい立ち話をした。
ライブハウスでは、風花のメンバーが近くまで来たということでライブハウスに寄ったところに俺が歌っていた、という出来事も。
会えばエロ話しかしない俺たちは、連絡先をお互い知らないことに気づいて赤外線をお互いの携帯電話の黒いところに飛ばしあいました。

いやあ。
神様は何か俺に言おうとしている、と思ったぜ。

話は変わって。
家を出て駅に向かう道に、いちじく園がある。
その場所は以前梨園だったんだけど、今年からいちじくを専門に扱うようになった。
農業の費用対効果のことや、人手不足のことなどを考えての判断だと思うけど、俺はいちじくより梨の方が好きなので、少し寂しさを覚えた夏でありました。
そのいちじく園は、鳥の害から守るために、一面に緑のネットをかけている。
広い農地の周りと天井にモッソリとかかった緑のネット。
辺りは住宅街で、夏になるとそのネットの中からセミの声が聞こえてくる。
何年間も土の中で我慢して、ようやく成虫になり、外に出れる日を迎えたのに、緑のネットの中の世界しか知ることが出来ずに死んでいくセミもいるということ。
もちろん人間が出入りする入り口はカーテンのようにネットが切れていて、農機を入れるときや夕方は開け放たれている。
運のいいセミやかしこいセミはそこから出て、更なる外へと飛び立つことが出来るんだけど、それはきっとごく一部なんだろうなあ。
多くは、その緑のネットの中が世界だと思い、世界中のセミがこのネットの中にいると思い込んでいるに違いない。

そんな夏が過ぎ、今日、駅に向かっているとき。
緑のネットが一匹の蝶を飲み込み、飲み込まれた黒い蝶は緑の中でバタバタとはためいていた。
どこから紛れ込んだのか、その蝶は外の世界を知っているらしく、ネットのこちら側に向かって、あの手この手で外に出ようと試みている。
しかしその場所には穴がなく、どう羽ばたこうと外に出ることはできないだろう。

外を知っていても、外の世界に出ることができない。
この蝶は、このまま緑のネットの中で生涯を終えるか、それとも運を味方にして、あるいは機転を利かせて外に出ることができるか。
その日まで羽ばたくことをやめないだろうよ。

俺は、この蝶によく似た男を知っている。