WORDS
毎日の色

よく晴れた青い空を切り裂いたビルの間を歩いていく
今さっきすれ違った人は昨日も同じ場所ですれ違ったな
ああ ポケットにはポケットティッシュが三つもあって
ほっこりしたズボンを気にしたときに耳たぶに風が吹いた

言いたいことも言えない世の中になったと彼は叫んでいた
彼は結局何も言えないままで奥さんの扶養に入ったらしい
ああ それはそうと言いたいことが何も無いという
蛇口から垂れ流す時間が排水溝に渦を巻いた

世界で一番好きと言ってくれたあの人にはもう会ってない
移り行く季節は油絵のように新しい絵の具を重ねてく
おーい 元気ですか? どうせ返事は無いと思うけど
耳たぶに吹いた風は今頃誰かの頬を撫でてるだろう

泣きなさい笑いなさい
いつの日かいつの日か花は咲く
街中の音絡まる中どこからか響く歌
雨の日も風の日も
相も変わらず通るこの道の
道端に咲く黄色い花 風の向こうで揺れる

時は夕方 ビルの影が街に圧し掛かり隙間を埋めてく
振り返れば夕陽がそこにありまして自分の影も長く伸ばす
ああ ご苦労様 今日も一日お疲れ様です
皮肉まじりの空は茜色 もうすぐ藍色に変わる

歌えなかったラブソングを歌いましょうと彼は歌っていた
よくない噂が絶えない彼は若さと男女の国境を越えた
ああ それはそうと歌いたい歌が何も無いという
心に開いたドアは入り口ですか? それとも出口ですか?

ああ 夜は月が昇る
ねえ見てごらん
今日の後姿が月に照らされて青く光ってるでしょう

帰ろうかなやめようかな
長いトンネル抜けて行こうかな
ガタゴト揺れる祭囃子 夜の魔法は解ける
あの花もあの風も
あの夕陽も空も月も影も
あとふた駅で降りる駅も 毎日の色になる

毎日の色になれ