WORDS
ぼくのおそうしき

「しばらく会わないようにしよう」と言う
自転車の後ろ姿はもう消えた
遠くの方からサイレンが聞こえる
そういえば今日はぼくのおそうしき

階段をひとつ飛ばしで上っていく
一番上に着くまでは振り向かない
確かに思い出は美しくなるらしい
冷たかった手のひらまで覚えてる

見えなくなるまで手を振るつもりかい
悲しくないとかいう嘘をつく
こんな時でも夕陽はきれいなんだな
できそこないの声で咳をする

公園に残る夕方の余韻と
鉄棒にかかった帽子は誰のもの

忘れないように名前を付けておこう
それとなく今日はぼくのおそうしき

見えなくなったら忘れてほしい
あまのじゃくな言葉で嘘をつく
こんな夜でも月はきれいなんだな
できそこないの声で咳をする

咳ひとつ