カメレオン

先日の話。
オーウェストにゴーウェストいたしまして。
階段で素敵な笑顔を湛えたレディースアンドジェントルマンを待ち構えては、思い出に便乗させていただきました。
その際、アジカンジャンフーアレネーションのジャケットに描かれている女子のようなあねさんと目が合うやいなや
「キャー!ブログ見てんよ!絵本みたいよ!」
という励ましの言葉をいただきました結果、恥ずかしくなって、現在、手が震えております。
あれから、いろいろあったので、もう十分言い訳も考えるじかんもあり、心臓満タンで、ついにはハートフルなファッキューが言えるようになる。
こんな大人を見て、吉祥寺のヒロトさんは唾を路上に吐きつけるに違いない。
体調はすこぶる最悪。
一年に一度訪れるクフクフの人が乗り移り、咳が止まらない。
咳が止まらない上に、風邪を軽くひいたみたいで、鼻が詰まる。
鼻が詰まったまま咳を連発するものだから、90パーを口から息を吐くとして、10パー分の鼻から抜けるべき二酸化炭素が行き場を失うのよ。
行き場を失った二酸化炭素たちは、鼻の付け根のピロティに集まり、相談し、近くの穴へとダッシュする。
耳ね。
なので、中耳炎になりました。
最初の一日は、断続的に続く鈍痛が右耳80左耳20で地味に攻めてくるのに困り果て、また寝た。
ああ、小学生のとき、中耳炎でプールを休んだあの少年は、この痛みに耐えていたんだろうなあ。
大人でも苦い痛みの連続なのに。
目を瞑って右耳に意識を集中させる。
耳鳴りがひどい。
血液の流れる四つ打ちのリズムがそれにかぶさる。
目を瞑り、耳の中を奥へ奥へと進んでいく。
もうこれ以上進めないってところ。その横にさらに暗くて深い穴。
顔を入れて覗き込んで見ると、どこまで続いているのかわからない。
向こう側のこちら側への出口の壁に、ひとりの男がいました。
向こう側からこちら側への入り口と呼ぶべきか。
まあ、どっちでもいい。
その男は仮眠を取っていたのか、なにかの気配に気づき、目を半分開けていた。
目が合い、軽い会釈を交わし
「あなたは誰ですか?」
と聞いてみた。
その男は
「ぼくはどろぼうだよ。」
と言い、ずれた帽子をなおし、立ち上がりました。
「どろぼう?なんでここにいるの?」
顔だけ出したまま、ビックリしました。
「仕事だよ。」
平然とその男は答えます。
「取るものなんてないじゃない。」
「考えていることをちょいといただくのさ。」
どろぼうは、悪いことなんかしてないそぶりで言います。
「オークションで売れば、いくらかのお金になる。」
それは面白いと思い、自分の考えがいくらになるのか聞きたくなりました。
「それで、いくらになるの?」
「ここでいただいた考えは、この前のオークションで60えんだった。」
その値段が安いのか高いのかわからないので、おかしな顔をしていたと思います。
その様子を見て、どろぼうは
「ずっと前、アインシュタインさんの考えをちょっといただいてオークションに出したんだ。」
アインシュタインだったら知っている。
相対性理論で宇宙や浦島太郎の話を作った人だったと思う。
「そのときのオークションは大成功で、400おくえんだったよ。そのあとはしばらくバカンスしていたんだ。」
比べるのはばかげているけど、ここまで差がつくなんて。
ガッカリしているあいだにも、どろぼうの話は続いていく。
「ジョンくんは知ってるかい?なんだったけな。昔、有名なバンドで歌を歌っていたんだ。」
もちろん知ってる。ジョン・レノンのことだ。
「ジョンくんの考えもすごく高く売れた。あとは、龍馬くんやジミーくん。ビルくんや織田くんなんかも好評だったな。」
こんな話をずっと聞いているのはまっぴらだと思い、顔を引っ込めて帰ることにした。
こういった小さいことにこだわるから60えんなのかな、なんて思いながら。
遠くの方に明かりが見える。
出口だ。
今まで暗いところにいたから、出口が近づくにつれて、目を開けてられなくなる。
あと一歩で出口。
よいしょ。
って外に出たときに次の日の朝になっていました。
どれくらい眠ってたんだろうな。
っていうのはどうでしょう?
感化されすぎかしら?