サタン
悪魔を見た。
乗り込んだ電車は、座席は少々空いているがガラガラというわけではなく、6人がけシートに4~5人が座っている、そんな地下鉄だった。
座らなくてもいいというサラリーマンがドアの前で本を読み、3人グループの女子高生が話をしながらつり革に身を任せる。
駅で一人の女子高生が乗り込んできた。
俺の向かい側のシートのつり革につかまり、足の間にバッグを置く。
電車が動き出すと同時に、シートの端に座る老人が女子高生に話しかけはじめた。
そのとき、俺のアイポッドからは忌野清志郎さんが喉から言葉を搾り出している。
視覚だけで判断すると、ふたりはまるで親戚のような雰囲気。
イヤホンからの音量は控えめで、その老人が声を大きくするたびに音楽が聞こえなくなる。
ついには、イヤホンを外し、老人と女子高生の話に耳を傾ける。
すると…。
つづく。