WORDS

幸運

タバコをプカリとふかす僕を
見るたび煙たそうな顔をする君

紅茶とスミレの花が好きで
雨の日の日曜が好きと言う君

怒ったら怖いけど可愛くて
真っ直ぐで優しくて少しドジなんだよなあ

男は泣くなと君が教えてくれた
だからもう最近はあんまり泣いてない
雨降る日曜 窓の外を見ている
僕の人生最高の幸運は君に会えたことなんだ

今夜の月がとってもきれいと
部屋の明かりを消して見せてくれたね

今夜もあの日と同じような
上限の月が出て明かりを消してる

よく泣いてよく笑う君だった
最後まで心配をかけっぱなしだったなあ

男は泣くなと君が教えてくれた
だからもう最近はあんまり泣いてない
スミレがそろそろ咲き始める頃だよ
あれからもう三回目の君が一番好きだった季節がくる

泣いたらダメよと君と約束をした
だけどさ今夜だけ 泣いてもいいでしょう?
写真の中では変わらない君がいる
僕の人生最高の幸運は君に会えたことなんだ

いまおもうこと

言いたいことなんて本当にあるんだろうか
君は愛を歌い あなたは世界を歌う
それなら それならば
今この歌を歌う僕は
空っぽの歌に何を乗せよう 何を乗せよう

タバコの煙の向こうには曇り空
時折通り過ぎる乱暴な車
年老いた顔をした
風の尾っぽを首に巻いた猫が
目を細めて喉を鳴らす 喉を鳴らす

靴の中敷は地球のすべて
吐く息の温度は空のすべて
地球と空をむすぶ
背骨はまるでホチキス
赤茶けた錆がざらついている ざらついている

言いたいことは言わなくていいこと
言葉にすれば輪郭がぼやける
心臓がこだまする落書きの中のメロディ
この衝動をどうやって伝えよう

行きたい場所なんて本当にあるんだろうか
君は道路を走り あなたは海を渡る
それなら それならば
今このステージに立つ僕は
真っ白いノートに何を描こう 何を描こう

この坂道は途切れてしまったので
上る人と下る人がぶつかってしまう
しゃがんだ傍観者の
あの初老の男はかつて
月の裏側を見てきたという 見てきたという

行きたい場所は行かなくていい場所
旅が終われば色彩は薄れる
毛穴に滑り込む地平線の向こうのストーリー
この瞬間をどうやって伝えよう

聴きたい歌なんて本当にあるんだろうか
君は五線を遊び あなたは螺旋に揺れる
それなら それならば
今この奇形の心をさらす僕は
透明な皮膚で何を隠そう 何を隠そう

聴きたい歌は聴かなくていい歌
何度も聴けば情熱が剥がれる
絵の具を散らばした最後に見る空はパレット
この景色をどうやって伝えよう

この景色をどうやって伝えよう

100億のミュージック

銀河鉄道急行待ちです
深呼吸して宇宙にさよなら
手を振る指の形がチョキなら
リズムだって生まれてくる

キリンの夢を見ている途中で
テレビの有名人が出てきて
それを境に気になりだしたら
歌もきっと聞こえてくる

五臓六腑に響いたトラウマになるメロディ
知らんぷりは切ないでしょ
思うまま 耳をすませば

100億のミュージック
心をノックする
受け止めて 抱きしめて
悲しみはジョークに変わる

100億のミュージック
想いをシェイクする
言いたいこともそう 言えないことも
うれしいことも悲しいことも
気がつけばリズムになる

親譲りの無鉄砲な犬が
「君は犬派か?猫派か?」と聞いた
答え次第で鳴いてしまっても
歌はきっと生まれてくる

56対15で打撃戦でも敗れた
久しぶりに泣きたいのよ
そんな時 耳をすませば

100億のミュージック
言葉をロックする
なすがまま ありのまま
いつになく遠くへ行ける

100億のミュージック
涙もジャンプする
楽しい午後もそう 寂しい夜も
見えるものも見えないものも
今全部歌になる

それが今の君のミュージック

ひとりふたり

等間隔に並ぶうつむいた街灯は
白い光の中に言葉を隠している
僕の影はふたつになりひとつが消える
つまりそういうことなのでしょう

嘘をついている僕の目を見て
全部分かってると君は笑っていた
思えば僕は嘘について幸せについて
なにひとつわかってなかったのでしょう

倒置法でもなく 帰納法でもなく
本当のことが言えなかっただけなのです

僕は狂った夜を歩いた
風の絶え間に音が消えた ひとりだった
吐き出しそうな空を見ていた
雲の切れ目に月が見えた ふたりだった

遠くの方に見えるふてくされた信号は
人も車もない道路で噂をする
赤い目はついに僕のことを一瞥もせず
とうにばれていたのでしょう

ボールペンの先のような小さい心を
それで十分だと君はうなづいた
考えてみれば甘えるだけ傷つけるだけ
言わば僕は駄目なのでしょう

クライマックスもなく エンドロールもなく
大切なことをごまかしてしまったのです

僕は濁った朝を歩いた
風の絶え間に音が見えた ふたりだった
影をなくした空を見ていた
雲の切れ目に月が消えた ひとりだった

ふたりだった ひとりだった

ウインク

「だいたいのことは忘れちゃうの?」
時速3キロの君が問う
「本当のことは誰に言うの?」
僕はなんとも答えようがない

君の右手には赤い傘
午後から雨が降るらしい
君の予言は甚だしいが
僕はいささか信じられない

気がつけばほら空中に溶けちゃって
遠くに浮かんだ 双眼鏡持ってないや

おかしな笑顔でダバダバ
何かを見つけるやいなや
ウインクひとつでバタバタ
君は世界の半分を消した

「””みんな””って誰のことをいうの?」
いびつな五叉路で君が問う
僕の居場所も穏やかじゃない

振り向けばまた数メーター遠くなって
鼻歌ミレドミ ヘッドフォン持ってないや

逆さま言葉でダバダバ
何かを指差すやいなや
ウインクひとつでバタバタ
君は世界の半分を消した

予言どおりの雨が降る 赤い傘がパッと開く
それはまるで信号の赤い色を思い出す

無邪気なフォームで手を振る
もう会えないような気がした
ウインクひとつでバタバタ
君は世界の半分を消して

僕の半分も消えた

手紙

直接言うとなんか照れくさいから
言いたいことを手紙にしました
久々にお酒を飲んで少し
酔っ払っています

今こうして今までの君のことを
いろいろなこと 本当いろいろなことを
思い出したら 泣いたり笑ったり
たくさんの君がいました

僕のことを嫌いと言った君が
そのあと泣きながら謝りに来た
『ごめんね』と言う君の小さな声は
心に届きました

手を繋いで歩く
君の手は小さく
いつか離れていく
わかってるから
その手を強く握ったんだよ

そういえば君がじゃんけんのとき初めに
チョキを出すという癖を知っていましたか?
ふたりのじゃんけんの勝ち負けの行方は
僕のさじ加減でした

初めてくれた僕の似顔絵が
昨日引き出しの中から出てきました
どうやら覚えたてのひらがなを使って
『おとうさん』って書いてあります

君が生まれてから
君が旅立つ日を
少し考えたり
夢に見たり
わかってはいたけれど

僕は君のヒーローにはなれなかったと思う
君が違うと言っても 僕のことだから
でも 誰より何より君を想う
ふるさとでありたい

やはり時間は確実に進んでいるんですね
僕は年をとり 君は大人になりました
改まって言うのは少し変だけど
生まれてくれてありがとう

最後になりましたけど 君の幸せを
心から祈っています
おめでとう

おめでとう

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